あやうく懲役なるとこやった・・・

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先日アメリカでスピード違反で捕まり、日本に帰ってきてから「罰金はおいくらですか?」と電話したら「22マイルの速度超過は軽犯罪でっせ。裁判所に出頭してもらわなあきまへん」と言われ仰天しました。ええーっ、確かにお巡りさんは「罰金払ろたら裁判行かんでもええから」とおっしゃっていましたよ!それに20マイル(32km)オーバーで軽犯罪なら、大阪のドライバーは全員逮捕されます!(←心の声)

アメリカでも、カリフォルニアを始めとする他の州では、22マイルくらいなら反則金で済みます。異議を申し立てたい場合のみ、裁判所に出頭して釈明すればいいのです。ところが私が走っていたバージニア州では、20マイル以上はReckless Driving (無謀運転)というmisdemeanor(軽犯罪)となり、出頭は必須、罰則は最高で懲役1年+罰金2500ドルだそうなのです。しかも、昨年からそうなったのだそうです。お巡りさんも法改正されたの忘れてたんじゃないんですか???

国外逃亡するつもりでは無かったことや、裁判日には出頭(渡米)できない旨を電話口で説明すると、「ほんなら裁判官にそない言うて手紙書いてみいや。どないなるかわかれへんけど。」と言われました。時差の関係で電話をしたのは真夜中でしたが、あまりのショックに目はパッチリと覚めてしまい、即、パソコンに向かって裁判官宛に懇願の手紙を書きました。要旨は以下の通り。

・私は法律を守る真面目な市民です。私の運転記録を見ていただけば、一点の曇りもありません。
(カリフォルニア州の運転免許官庁への照会申請書のコピーを添付)

・今回は短期の訪問で、すでに日本に帰国してしまっているため、ご指定の日には出頭できません。
(パスポートの出入国記録のコピーを添付)
 
・裁判日に出頭できないため罰金を前納したい旨は、予め警官に申し上げたはずなのですが・・・?
(この段階で証明できないミスを追及して警官を敵に回すのはタブーなので、遠慮がちに主張)

・私は前の車と同じスピードで走っており、一旦は一緒に停止しました。警官も見ておられました。
(悪意で違反したのではないこと、それを裏付ける状況証拠)

・慣れないレンタカーで見知らぬ土地を走っており、メーターを見る余裕がありませんでした。
(その日の朝に入国したばかりであることをパスポートで示し、さらに運転初心者感を漂わせる)

・米国で教員をしていましたが、現在は日本の国立大学勤務で、今回は学会のための短期渡米です。
(国外にいて出頭できない理由、米国免許所持の正当化とともに、信用できる人物像を示唆)

・容疑は認めます。今後は同じ過失をしないよう注意しますので、どうか出頭はご容赦ください。
(ひたすら低姿勢で情状酌量を拝み倒す。但し「過失」である点だけは忘れずに・・・)

ちなみに最初は「カリフォルニア州では20マイルオーバーはただの交通違反扱いになるため、出頭はしなくて良いものと思いこんでおり、ご連絡が遅れました」という一文も入れていたのですが、アメリカ人の友人が「それではまるでいつもカリフォルニアでいつも違反をしているように聞こえるよ」と警告してくれたので、その部分は削除しました。(彼ら、さすが経験豊富!)

実際、ここ6年間は日本に住んでいましたから、その間、アメリカでの違反歴・事故歴はゼロです。前歴によって裁判官の判断が大きく変わるということは、どこかで読んだ情報でした。とにかく、書類上は「米国での運転歴10年以上」であることが示されている免許証ですので、「実は滅多に運転しない初心者で、右も左もわからぬ外国人」なのだということをひたすら訴えました。(国際免許で運転しておけば、なんでもなかったものを~ToT)

添付書類をすべて揃えて通しページ番号を打ち、いつになくカバーもつけ、祈りをこめてFAXしました。しかし裁判官がこの手紙を読んでどう判断するかは、一週間後の裁判の日までわからないそうです。もし「ごちゃごちゃ抜かしよってからに顔見せへんゆうんはどないなこっちゃー」と機嫌を損ねたら・・・

どうしても出頭して来いと言われてしまったら、また長期に休むことになり、職場的にもマズイです。夏休みに入ってからでは飛行機代が高すぎますし、早めに手配しないとノーマル運賃になる恐れも・・・心配になった私は、その地域の弁護士4名を探し出し、メールで弁護費用の見積り依頼をしました。1名は返事無し、1名は「電話ください」だったので不採用、他の2名から返事が来ました。

弁護士A:

「バージニア州では無謀運転は懲役1年、罰金2500ドルになりうる犯罪であり、弁護士が必要です。被告人出頭免除の申請期限は過ぎているので、代理人(弁護士)が裁判所に行く必要があります。私はその日は別の裁判があり、延期申請と実際の出廷で2回行かなければなりませんので、費用は合計で1000ドルです。ご契約される場合は、クレジットカード番号と有効期限をお知らせください。」

弁護士B:

「当事務所の豊富な経験によれば、十分に勝ち目があります。事実関係・警官・検事・裁判官などの諸事情にもよりますが、22マイル程度でしたら弁護次第では無罪放免、少なくとも通常のスピード違反への減刑は可能です。弁護料は一律900ドル、350ドルの追加料金で地方検事に本人出頭免除を願い出ることもできます。ご契約される場合は、委任状にご署名が必要ですので、ご連絡ください。」

さて、あなたならどちらの弁護士を雇いますか?

私も、1000~1250ドル程度で済むなら、罰金や飛行機代より安いじゃない・・・と思いかけました。「出頭免除申請の期限が過ぎている」という弁護士Aの一言も大変気になりました。交通違反を専門にしている法律事務所のサイトをあれこれ見ましたが、不安を煽る記述ばかりです。しかし弁護士Bは、本人出頭免除の申請に期限があるなどとは一言も言っていませんよね・・・?

犯罪容疑者にはプライバシーもクソもないらしく、他人の検挙歴も裁判所サイトで公開されています。もう少し調べてみようと思い、他の容疑者の判例をあれこれ検索して読んでいくと、いました!私と同じ22マイル超過の人が、「欠席裁判・有罪」で300ドル程度の罰金で解決しています。もしそれで済むなら弁護士費用より安いじゃないですか!

もちろん、有罪になれば減点(6点、11年存続)は免れませんが、日本で国際免許を取れば済むことですし、今後11年間、この現地免許で運転しなければよいわけです。同じように情状酌量されるという保証はありませんが、1000ドル以上の罰金はなさそうな気がします。(その同じ22マイルの人が白人男性だという点はちょっと心配でしたが・・・)

弁護士Bの「十分に勝ち目はある」という自信に満ちた言い方も、楽観的な観測を添えました。結局、自分自身の弁護力(手紙)を信じ、運にかけて裁判の日を待ってみることにしました。裁判日の午後(日本時間の朝4時頃)、電話をかけるのが怖い私はまず裁判記録サイトを見てみますと、ありました!私の犯罪記録は「欠席裁判・有罪、罰金95ドル+手数料56ドル」と書かれていました。

やったぁぁぁ~っ!!!(^o^) (^o^) (^o^)

スピード超過が22マイルから19マイルに減らされていて、「軽犯罪」から「反則」に変わっています。レーダーで測ったはずの速度が裁判官の情状酌量で変わるというのも面白い話ですが、そんなことは申しません。

「ああ、バージニア州の裁判官にも正義はあったんだ」と深く感動しつつ、念のために裁判所に電話すると「15日以内に罰金払わへんかったら免許停止やで~」とまたニュース。カリフォルニアの住所(友人宅)に送られてくる請求書を転送してもらっている余裕はありませんから、その日の昼休みに郵便局に飛んでいき、早々に国際EMSで151ドルの小切手を送りました。

小切手は普通郵便でも送れるのですが、配達記録があるほうが安心ですからね。罰金をこんなに嬉々として支払った経験は今までにありませんが、それにしても、今回のF.L.ライト作「落水荘」の見学は、ずいぶんと高いものについてしまいました。