渋いガキ(音楽編)

子供の耳は恐ろしいです。

私が比較的家でオペラ等のレコードをかけていることが多かったため、上の子は5歳くらいのときに「カルメン」のアリアを正しいフランス語の発音で口づさんでいました。トイレでウンチしながら、「今夜は酒飲んで踊るわ~♪」みたいな曲を楽しく歌っていました。もちろん歌詞の内容は全く理解してなかったと思いますが・・・。彼は幼少時から楽器をやっているので、私には聴き取れない微妙な音の違いが聴こえるらしいです。大人数アンサンブルの各パートも聴き取れるようだし・・・羨ましい限りです。

下の娘はモーツァルトの「フィガロの結婚」等が大好きで、あの長いDVDをじっくり見ています。彼女はイタリア語の曲が得意です。「ボス」の仕事にも必要な言語と言えるでしょう(?)

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しかし最近ボスはフォーレの近代歌曲に凝り始めました。フランス近代歌曲は、ボードレールヴェルレーヌなどの詩にフォーレドビュッシーなどがメロディをつけた印象派な音楽。歌詞も難しいしリズムやコード進行も複雑です。私でも、完全には理解できないことが多いです。

しかしこのガキは、何種類もあるCDの中でもジェラール・スゼーというバリトン歌手がお気に入りで、「あの男の子が歌ってるやちゅにちて!」と指定してきます。4歳にしてはずいぶんと渋い趣味です。私は8歳でビートルズがやっとだったのに・・・。

とまあ声楽にはとことんうるさいボスが、ある日、テレビで歌っている日本人テノール歌手を見て「この人、ヘンやな」と言うのです。あの「千の風になって」が大ヒットしてる方です。日本中で何百万人を泣かせている曲らしいので、異議を唱えるにはかなりの勇気がいったのですが、実は私も、あのイタリア・オペラのような歌い方には心の片隅で違和感を感じていました。でも血筋はサラブレッド、一流音大を出、留学もして賞も取ってはるお方・・・

しかし、耳の肥えたボスがはっきり「ヘンだ」とおっしゃったので、ついに勇気を出してベテランの声楽家の方にその疑問をぶつけてみたのです。すると・・・

「あの曲であんな歌い方、おかしいに決まってるじゃない。」とバッサリ。

日頃聞き慣れていないクラシック系の歌手、特に豪華なレジュメのついている方だと「実力があるんだな~スゴイな~」と思い込みがちなのかもしれません。私が「理系の人はみな賢い」と思い込んでしまうのと一緒ですね。でも実力はピンからキリまであるし、CDが売れている方でも「え?」と思う人は多いです。名も顔も売れている建築家が実は「連続・欠陥住宅犯」だった、なんて怖~い話もあります。

もちろん好みの問題なので、あの歌い方が好きな人が多いのは結構なことなのですが、自分の感じたままに正直になることも大切だな、と思った次第です。

ボスのおかげで少しスッキリした夜でした。

☆☆☆

今学校で、クラシック音楽にあまり詳しくない一般の大学生22名に、予備知識無しで有名な曲の一部(さわりorハイライト2分程度)を聴いていただき、その音楽からどんなイメージを受けるか、を自由に書いてもらう、という遊びをしています。昨年の結果を思い出しても、面白い答えが結構出てきます。先入観のない鑑賞って大事だな~と思います。