大学の非常勤講師とは?

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この「控室」という機関誌の名称には、私達の思いが込められています。

非常勤講師は学内に自分の研究室がないので、授業時間以外は「控室」と呼ばれる共同利用室にいます。大きなテーブルに見知らぬ先生方と合席で、採点をしたりお弁当を食べたりしているのです。私のバイト先の大学の「非常勤講師控室」には、無料の紙コップ・コーヒー機が置いてあります。ホッと一息つける、とても有難い配慮です。自由に使えるPCや、コピー機印刷機もあり、他大学に比べて好待遇な非常勤講師控室です。(前の大学では、約4畳大、ボロ机に8年落ちMacが一台置いてあるだけの窓のない部屋でした~~~)

ここの控室の珍しい点は、専任教員の方も利用できるという点です。教授の先生方が、たまにこの無料コーヒーを飲みにいらっしゃいます。

私達の学科のような実務系では、企業や役所にお勤めの兼業講師や、自営業者、年金受給者の講師が多く、私のようなお気楽講師もウロチョロしているため、あまり問題にならないことですが、この控室にいる先生方の約6割は、他に生計を立てるすべのない「専業非常勤講師」です。特に語学や人文学系、理学系の先生方の場合、不本意ながら苦しい非常勤に甘んじている方が8割です。

以下、専業非常勤講師の実態です。(2005~2006年度調査報告より抜粋)

 平均勤務校数 3.1校 (複数の大学をかけもちしてやっと生活してるということです)
 平均担当授業数 週9.2コマ (ちなみに、専任教員の授業担当ノルマは週5~8コマ)
 平均経験年数 11年 (こと学生指導に関しては、非常勤講師は場数を踏んでいます!)
 平均年収 306万円 (専任教員なら30代助手でも600万円~、教授クラスは1000万円~)
 平均年齢 45.3歳 (民間への再就職はほぼ不可能。公募の年齢制限も・・・号泣)

この苦しい生活の中から、研究費も、学会費や出張費等の必要経費もすべて自腹で捻出し、研究時間には一切の報酬を得られない中からも時間を工面して論文を出し続け、毎年数十万円の国民健康保険国民年金保険料を工面し、何十倍、何百倍という競争率の、しかも年に一度出るか出ないかの「公募」に望みを託しているのです。学位も自力でとり、立派な業績を上げている方も沢山いるし、教育熱心なベテランも沢山います。

でも残酷なことに、「専業非常勤」は非常勤講師のランクの中でも一番下の待遇なんです。他大学で助手の職にある20~30代の若者よりも、45.3歳のベテランのほうがお時給が低いってこと!かくいう私も、毎年高い評価と、昨年は「教え上手な教員賞」までいただきましたが、待遇は変わらず。むしろ表彰金をいただいた分「パート103万の壁」を超えちゃって、実質所得減という憂き目に・・・^^;

それになぜか、文科省からの非常勤講師に対する私学助成金が1.5倍に引き上げられたはずなのに、私達のお給料(1コマあたり月給20000円~30000円)はここ5年間、1円も上っていません。文科省助成金はいったいどこへ消えてしまったのでしょう???とにかく、これだけ大学の経営が苦しい中、せめてものご厚意(お詫び?)として、この無料紙コップコーヒーを出していただいているのだろうと理解しています。

いやいや、一杯数10円の紙コップコーヒーの経費の問題ではありません。不本意にも非常勤のまま40歳半ばを向かえ、掛け持ち勤務でようやく家族を養っている専業非常勤が、専任教員の先生方に対してどういう思いを抱かれているか、ちょっと想像してみてください。もしアナタが専任だということがわかったら、非常勤からの鋭い視線がお背中を射抜くはずです。もしかしたら、非常勤講師の唯一の居場所とわずかな経費から捻出されたコーヒーは、ご遠慮されたほうが安全かも・・・

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お心ある方は、2007年度版「大学非常勤講師の実態と声」(写真の冊子)を、是非ご一読ください。大学と関係のない方にとっても、ノンフィクション読み物として十分に興味深い内容です。非常勤講師(職員)には500円で、専任教員(正職員)の方には1000円で頒布しているそうです。お問い合わせは、Email:naito@hijokin.orgまで(スパム防止のため、@を大文字にしてあります)