甘やかされる大学生

イメージ 1大阪芸術大学の(あるんですよ~大阪にもゲーダイ!)
ジャズ&ポップスコンサート2006に行ってきました。

学生の発表会にしては妙に贅沢で、腰抜かしました。

会場はNHK大阪ホール、
バックは、第一線のプレイヤーによるオーケストラ。

指揮をとるのは日本を代表するアレンジャー&ピアニスト、
私が尊敬してやまない前田憲男先生です。

(ここの教授になったらしい・・・嫉妬!)

そしてなんとゲストには保護者世代の大スター布施明と、受験生世代に大人気の土屋アンナ

新設の「ポピュラー音楽コース」を宣伝するためのイベントなのはわかりますが、
随分と頑張っています。(招待券配布の無料コンサートですよ)

私が通っていた無名な音楽短大でも、学園祭にランディ・ブレッカー(tp.)をゲストに呼びました。
凄いでしょ?(←知ってる方ならうなずいてくださるはず)

でもまさか入場無料にはしなかったし、共演したのは夜間部のセミプロ・バンドで、
昼間部のお子ちゃま・バンドと一緒に吹いてもらうような失礼はしませんでした。

ストリート出身の若者達にとって、満席のNHKホールの大舞台で演奏することは良い経験でしょう。
理事長さんも、これらのイベントは教育的配慮だとおっしゃってました。

でも、大物との共演や、一流のビッグバンドやオーケストラをバックに演奏するなんて機会は、
経験を積んで苦労を重ねてから自分で勝ち取るものじゃないんでしょうか・・・?

これではまるで、親のお金で桧舞台を買ってもらっているようなものです。
いくら誰でも簡単にCDが出せる時代とは言え・・・・・えっ、年寄りは黙っとけって?

布施明さんは「前田先生と共演させていただいて光栄です」とちゃんと挨拶されていましたが、
学生諸君は、前田楽団をバックに演奏できるという贅沢さをちゃんと理解しているのでしょうか・・・?

ここのポピュラー音楽コースでは、1回生から自分の好きな分野の音楽に打ち込めるそうです。
クラシックの勉強などによる基礎力習得はどうやら必修ではなさそうです。

せっかく総合音大で教授も揃っているでしょうに、実にもったいないことです。
(私もジャズ専攻でしたが、最初の一年間はクラシック音楽の理論と実技を勉強させられ、
非常にシンドイ思いをしましたが、今思えば大変良い経験となりました)。

そしてここのポピュラー音楽コースの入学試験は、ポップス1曲の演奏と16小節の視奏(視唱)。
たったの16小節!しかも下見の時間までもらえるって!それで出来ない人がいるの・・・?

さらに仰天したのが、センター試験のみでも芸大を受験できるそうなのです!
つまり、音大なのに実技試験無し。ええーっ!!!

挑戦の機会を広げることは大いに結構ですが、学生の将来までは心配していないような気がします。
子供を遊ばせるために高い高い私立芸大の月謝を支払っている親御さん達も、大した太っ腹です。

「一昔前なら親に叱られた」と理事長さんも認める、ゲーム・アニメ・ポピュラー音楽といった分野が、
ここの芸大では一番人気を博しているようです。

「昔と違って芸術は喰える」と強調されていましたが、それは心底真面目に勉強した場合でしょう。
痛みの伴わないところに真の学習はありません。

「芸術」の定義をそこまで広げるのは結構としても、
楽しいことやラクなことだけやって喰っていけている人は、実はほとんどいないはずです。

今はどこの大学も学生獲得で大変苦労しています。

「こっちの水は甘いよ~♪」とアピールしたい気持ちはよくわかりますが、
入学させて月謝を取る以上、厳しい現実をちゃんと教えるのが学校の責務だと、私は考えています。

・・・cool down・・・

布施明さんは初めて生で拝見しましたが、華やかな声と表現力、日本人離れしたタキシードの似合い方、
さすがはレコード大賞を何度も受賞している大スターの貫禄、たっぷり泣かせていただきました。

「デビューして10年、じっと我慢して頑張っていたらヒット曲に恵まれました。
一生懸命やっていれば、いつかきっと好きなことを仕事にできるようになりますよ。」

なんとも芸術大学の生徒募集コンサートにふさわしい、素晴らしいMCじゃありませんか!

しかし土屋アンナ・オン・ステージの趣旨は???

イメージ 2ハーフで美人で雑誌・広告モデルでカリスマ。

マルチタレント活動の一環として女優をしたり
歌を歌ったりしている人をゲストに呼んで、

これから真面目に音楽を勉強していこうとしている若者達に
いったい何を伝えたかったのでしょうか・・・

案の定、一曲めが終わった途端、私も含め、
中年以上の年齢層の観客が一斉に会場から出て行きました。



元ロック少女でジミヘンやツェッペリンコピーバンドをしていたこの私ですら、この歳になると、
あまりの大音響PAや過度のディストーションには「ちょっと勘弁して」と思います。

貴賓席にズラッと並んだ白髪&光頭の先生方はお気の毒なことで、たぶん学園理事のお歴々でしょう、
帰るに帰れず、爆音の中に座りつくしておられました。

心臓のほうは大丈夫でしたでしょうか・・・?