一世代前の学生起業家

宗教の壁を超えた旧友達(?)をご紹介します。

彼ら(神社と寺院の跡取り、各1名)は、高校の同級生で、共に東京大学に進学しました。
神社君は文科一類、僧侶君は文科三類(もちろんインド哲学科へ)でした。

僧侶君は「一休さん」のような坊主頭で、夏休みには必ず京都へ修行に行っている真面目な仏教少年。
一方で、本格的な袈裟を着て「瀬戸内寂聴の真似~♪」といったネタを疲労する面白い人でした。
(そのネタは下品すぎてとてもここには描写できません)。

当時の東大受験生は、早慶などの有名校を文理・学部構わず併願するのが普通でしたが(やな感じ!)、
僧侶君は東大に落ちたら実家の系列の(偏差値40くらい?)の仏教系大学へ進むことになっていました。
当時、これほど真剣に学科の内容を考慮して志望校を決めていた受験生がいたでしょうか?

そんな背水の陣だったので、二次試験の朝に彼が39℃の熱を出したときは周りの者が皆で心配しました。
しかし僧侶君は「高熱のおかげで邪念なく受けられたぜ♪」と言いながら笑顔で帰ってきました。

神主君は、とにかく歌が上手で(18番は「与作」。イントロの和楽器の音から全部一人で歌います)、
車の運転席にカラオケセットをフル装備していつも歌いながら運転しているような人でした。
(後部座席じゃなくて運転席、おまけにアクセル踏む足でリズム取るんですよ。危ない!)

いつもは饒舌で爆笑トークができるのに、憧れのお姫様の前に出るとロクに物も言えなくなり、
当のお姫様以外の人間は皆彼の片想いに気づいている、といった純情少年でもありました。

さてめでたく東大に合格した二人は、仲間も集めて「新興宗教を始める」と言い出しました。
「何をする宗教なの?」と聞くと、「もちろんテニスだよ~!」
当時(80年代)はテニスサークル真盛りで、誰でも大学へ入ったらテニスをする時代だったのです。

この新しい宗教団体(?)は創設早々に東大で五本の指に入る人気テニスサークルとなりました。
間もなくサークル部員をスタッフとする塾を立ち上げ、これも大繁盛。なにもかも順風万帆でした。

ところが、ある出来事を境に、神主君のほうが公の場に姿を現さなくなってしまいました。
長年想いを寄せてきたお姫様が、もう一人の起業仲間(親友君、としましょう)と交際していたのです。

親友君も、神主君の気持ちを高校時代からずっと知っていただけに長い間言い出せずに内緒にしており、
それがさらに傷を深めてしまった模様です。

神主君はそれ以来、「司法試験受験に専念するために引きこもる」とのことでした。
司法試験には在学中に一発合格し、現在は弁護士として活躍しているようです。

僧侶君のほうも、名前を聞けば誰でも知っているような大寺院の息子さんでしたから、
おそらく立派に実家の跡を継いでいらっしゃることでしょう。

親友君はその後お姫様と結婚して4児をもうけ、現在は官僚として世界を又にかけてのご活躍です。
(ちなみにこのお姫様はカトリック系大学の出身)

昭和末期の神仏習合の試みはこのような形であっけなく幕となり、その宗教団体は後輩に引き継がれ、
普通のテニスサークル、普通の塾として存続したそうです。
(ECOさん、期待はずれな結末でゴメンナサイ)

高校在学中から美少女モデルとして活躍しながら現役で東大合格したスゴイ女の子もいましたが、
結局、高田万由子の道も菊川玲の道も選ばず、公認会計士として手堅い人生を歩んでいるようです。

村上某とホリエモンに挟まれたこの世代って、な~んか小さくまとまってますよね(笑)。
私的には、こういう抑えがきいて品の良いエリートさん達のほうが好きですけれど・・・。