建築士資格、よその国では・・・

「ええ~まさか」と思って聞いていましたが、本当に決まりそうですね、一級建築士の再試験!
全国の一級建築士姉歯氏に恨みの目を向けているのでは・・・?

「医師の再試験提案」だったら早々に日本医師会が握りつぶしてくれるでしょうに、
建築士の社会的非力さを痛感させられます。

こんな穴だらけの改正案が、どんどん通過成立して現実になっていきそうなことに驚いています。
何を慌てているのでしょう?耐震偽装に怯える国民のご機嫌取りのつもりなんでしょうか。

いずれにせよ、実務で忙しいのにまた試験だの講習だの義務付けられそうな一級建築士の皆さんに、
心より同情申し上げます。

「再試験に落ちたら二級に降格」なんて聞くと二級を誇りに思っている者としては内心面白くないんですが、
二級建築士の扱いはまた後で検討」だそうです。←なんか、ナメられてるよな~

何でも「講習・試験」をすれば仕事ができるようになると考えてしまうあたりが哀れです。

施工管理士系の試験では実務経験を語る小論文試験があるのですが、試験講習会などへ行くと、
「実務経験のない方は、このように話をデッチ上げましょう」なんてことが公然と教えられています。

実際、クラスの半数近くは、
 ・資格集めを趣味にしている定年退職オジサマ
 ・会社に「資格とって来い」と業務命令されて来ている建設会社系OL(たぶん事務職)
 ・「何でもいいから資格をとって手に職をつけたい」子育ての終わった奥様
などなど。

あの~、実務経験がないと受験できないはずじゃなかったですか?
(施工管理士は、指定学校を卒業していても最低3年の実務経験を要することになっています)

そのあたりの審査を徹底しないでいくら再試験をしてもどうなんでしょうか・・・
仕事で使ってない分野のことは忘れてあたりまえだし、一生試験漬けにしてどうするんだろ。
医師の国家試験だって全科受けるらしいけれど、実際に全科診れる人なんていませんよね。

専門学校・高等専門学校・短大卒は一級の受験資格がなくなるらしいけど、
大学のほうがいい教育してるなんて保証がどこにあります?(←大学関係者としても、大いに疑問です)。

イタリアでは、建築家(architetto, 意匠および計画一般)と構造設計者(ingeniere)は完全に別の仕事で、
大学も事務所も別でした。もちろん、元請・下請の関係ではなく、対等。

ヨーロッパでは建築大学を卒業することがイコール建築家資格なので、
「アンドーは独学なのよ」と言っても誰も信じてくれませんでした。

イタリアやスペインでは卒業するのに通常7~10年かかりますし、途中で落第・退学する人も多いのです。
イギリスでは、卒業する前に2年間の実務インターンも必要で、やはり最低7~8年かかるそうです。
卒業すればいちおうの専門家と呼んでもいいくらい、大学が厳しくて「ちゃんとしてる」わけです。

彼らの英訳が正しかったかどうかわかりませんが、「建築大学を卒業したらDoctor of Architecture(建築学博士)だ」と言ってました。
まぁ確かに、日本やアメリカで博士課程まで終えるくらいの時間はかかっていますね。

アメリカの建築系の大学では、構造係の基礎課目は一応必修ですが、
実務で計算するのはエンジニア(structural engineer)と呼ばれる工学部出身の専門家でした。

ここでも、建築は建築学部であり、工学部の一部ではありません。
(私の知る限り、意匠・構造・設備が両方必修なのは日本と韓国くらいです)。

建築と構造を両方勉強する熱心な人もいますが、その場合、同時に二つの学部に入学することになります。
入学願書も別々に出さなければなりません。授業料と必要単位だけは兼用できます。

「何でもつめこみ」のアメリカでは、学部では文学とか生物学など建築と関係のない分野を学んでいた人が、
3年制の「専門大学院」を出ることによって、建築士受験資格をスピード取得できてしまいます。

(余談ですが、学部で音楽専攻→大学院で医学専攻→医師免許取得なんてパターンもよくあります。
日本で最近流行っている法科大学院は、完全にこのアメリカ型高等教育制度の真似ですね。)

でも、大学院では週108時間(公称)くらい勉強させられますし、さらにインターンも十分に経験していないと設計事務所への就職できません(会社での教育や研修はないので、すでに仕事のできる人しか正社員採用しません)。資格試験も超難関(一発合格する人は2%程度)なので、ま、許してやってください。

アメリカでは建築士免許は2年更新制で、カリフォルニア州の場合、2年ごとに3万円強の更新料がかかります。

私が持っている造園設計士の免許も建築士とほぼ同じ制度(医師と歯科医師みたいな関係?)で、2年に一度300ドルの小切手を泣きながら州政府に送っています。

アメリカで仕事していないなら必要のない免許なのですが、一度途切れると再申請に高い料金取られることと、コロコロ変わる移民政策の中で「外国人に国家資格取らせるのはやめよう」という議論が出ることもあるので、「一度手放したらもう免許取れなくなるかも」という心配から、小切手を送り続けています。
あんな難しい試験、もう二度と受かるわけないし・・・あ~、でも毎年15000円、もったいね~。

日本の建築士も免許更新制になったら、ただでさえ経済的弱者な良心的建築家の皆さんをさらに苦しめることになりそうです。

建築士のみなさん、本決まりになってしまう前に、どんどん意見(文句?)言いましょう!
 → 国土交通省ホットライン http://www.mlit.go.jp/hotline/index.html