宇治のエコハウス

「えっ、今まで見に行ってなかったの?」と、私の素性を知る方々には呆れられてしまいそうですが、宇治にある、京都大学生存圏研究所(旧・木材研究所を含む)の実験棟、エコハウスです。たまたま別件でこちらのキャンパスに出かけたところ、用務先の目の前に建っていたのが、かねがね噂には聞いていたこのエコハウス。時間は無かったのですが、急いで管理者の先生にお願いし、中を見学させていただきました。(突然に強引に押しかけてお忙しい研究者の先生方にご迷惑をおかけし、本当にすみませんでした!)

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間伐材等を無駄なく利用する施工方法や、その強度、室内環境などを調べるための家です。平側は落とし壁式の木壁、妻側は貫工法の土壁、屋根は二重張りの勾配・表し天井。

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短尺の間伐材で作ったという13プライの35mm厚合板の床を、根太無しで支えるための桁グリッド。グリッドにピッタリはまった、和紙の手作り照明カバーがなかなかエエ感じです。構造だけプロの大工さんに頼み、内部の造作や仕上げはここの学生さん達が設計・施工だそうです。ここの研究者や学生の方が考案したという施工技術が、そこここで試されています。

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床下収納蓋らしきものを開けてみると、薬品を用いず産廃等を利用した防シロアリ材を考案する研究が!
実際に住宅の床下でやっているところが素晴らしいですね。シロアリはわざわざ健康に育てた上で、防蟻材を敷き詰めたコンクリートブロックの中に放ちました。コンクリート基礎を想定して、「さあ、これでも這い上がってこられるかな~?」という実験です。失敗しても家にダメージを与えないよう、シロアリの先生がちゃんと管理する約束だったのに、その方が目を離した隙に家の柱に少し上がってきてしまっていたと、木材の先生はややお怒りでした。

(ううっ、そのシロアリの先生って、たぶん私の出身校の方です・・・)

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屋根裏とか、いろいろなところに、温度センサー、湿度センサーがつけられています。風呂やキッチンも実際に使って生活してみて、木材の断熱・調湿作用を実験しているそうです。

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「うわ~、湿度による楽器の鳴りの研究ですか?それとも古材の調湿性能?」と早合点しましたが、「いえいえ、ここの学生が勝手に置いていっただけです」だそうでした・・・チャンチャン。そういえば、住み込みで実験している学生さん達の気配を残すかのように、お布団が散らかっていました!

説明してくださった先生は構造系の方みたいでしたが、木構造が将来に生き残っていくためには、新しい建築基準法にも対応できるきちんとした構造計算方法の確立が必要です、とおっしゃっていました。もちろん、経験を積んだ伝統構法の大工さんがきちんと作る家には、本来そんなものは要らないのでしょうが、その他大勢のいい加減な木造住宅を排除し、木造の地位を取り戻すためには、そうなのかもしれませんね。

短い時間でしたが、とってもタメになる見学で、「押しかけてみて良かった!」と思いました。
できればグループでまとめてアポを取ってから来てください、とのことでしたが^^; 

ちなみにここ、工学・建築系ではなく、農学系のほうの研究所です。