王立ソフィア芸術センター

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王立ソフィア芸術センターは、スペインはマドリードにある、近現代美術を中心に集めた美術館です。展示作品も素晴らしいですが、増築された新館の建築も印象的です。中庭の向こうの古い建物が本館、手前のピカピカした建物が新館です。見上げると、金属板が光を巧みに反射し、建物を空へ向けて消し去っています。やはり、ゴシック建築の昔から天空の光を扱い続けているだけのことはあるのか、スペインの建築は、どこも、上から差し込む光にウルサイ感じですね(笑)

入り口のエレベータへ行くと、団体と鉢合わせ、ツアーガイドさんが「2階で降りてください!」と叫んでいます。おそらく2階には何か目玉な展示があるのでしょう、団体客は2階で降りていきました。(後で知りましたが、2階の展示室には、有名なピカソの「ゲルニカ」がありました)

エレベータに残ったフランス人らしい二人連れは、3階へ行くか4階へ行くかで言い争っていましたが、

「4階は『テラス』だぞ。テラスなんか行ってどうする?」

という意見が勝ち、3階で降りて行きました。結局、どこに何があるのかもわからず、好奇心だけで一人4階まで上がって来た私は、エレベータを降りて眼下に広がるテラスの風景を見るなり「ワッ」と歓声を上げてしまいました。

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ガラスや鏡面に映り込んだ風景は上下左右が交錯し、今まで経験したことがないような不思議な空間体験です。道路側へ面したガラスの壁はあまりにも低く透明で無防備で、高所の好きな私ですら、一瞬恐怖を覚えました。しかし段差をつけたテラスを歩いていると、周囲や眼下の風景が絡み合い、本当に空中をさまよっているよう。某スカイビルの、ただ見下ろしながら渡るだけの陳腐なブリッジなどとは比較にならない、豊かな空間体験です。

後でたまたま、ここの設計者のジャン・ヌーベルと仕事をしたことがあるという日本人建築家の方に出会いました。「あの映り込みは全て計算ずくなのでしょうか、あるいはある程度の偶然でしょうか?」と質問してみましたら、「彼は何もかも最初からわかった上でやっています。天才なんです」とのお答えでした。

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王立ソフィア芸術センター(Reina Sofia)は、マドリード中心市街の南部、アトーチャ駅の目の前にあります。目の前と言っても、巨大ロータリーの横断歩道をいくつも渡らなければならないので4,5分かかりますが・・・

平日19:00-21:00、土曜日14:30-21:00と日曜日10:00-14:30は、個人客は入場料が無料になります。
他の美術館同様、閉館の15分前にはキッチリ、冷酷非情に追い出されます。

(始まりは遅れがちなのに、なぜか終わりだけは定刻に終わるスペイン・・・)

中は広く、映像作品も多いので、本館の常設展示をザッと一通り見るだけでも最低2時間は必要です。
絵の前で立ち止まったり、新館等の建築を撮影したりしたい人は、3-4時間は見ておきたいところ。
なお、某「ヨーロッパ建築案内」ガイドブックによれば「ハイテクの粋を集めた」そうなイアン・リッチー設計の本館のガラスのエレベータはおかしな動きをしますので、お急ぎの方は要注意。

メニューがお高いので私は座りませんでしたが、新館1階のカフェのインテリアは遊び心がいっぱい。
新館には図書館もあり、そこいらじゅうに「WiFiエリア」と書いてあり、PCがあれば使えた模様。

驚いたことに、こちらの美術館では、展示室内も、フラッシュさえ焚かなければ写真撮影可です。鉄道の駅なども含めてむやみやたらに「No foto!」なスペインにおいて、これはとても異例なことです。マドリードの中で最もゆっくりしたいと思った見学場所でした。