植木職の正直強盗犯、許してやって(涙)

国立市の郵便局で現金34万円を奪った強盗犯が、後日利子(?)1万円を上乗せした35万円を返却し、
さらに良心の呵責に耐えかねて自首してきたそうです。

33歳、植木職人・・・生活が苦しくてやりました。

情状酌量してやってくださ~い!!!
「生活が苦しくて」は多分本当です。保証します!

建設物価を見ていただいてもわかりますが、あらゆる職方の中でも、造園工って最も賃金が安いのです。
例えば、大阪あたりでは平均日当18000円くらいになっていますが、
会社勤務の場合、実際に職人さんがうけとるのはその1/2~1/3程度。

「社員」とは言っても、ボーナス無し、退職金無し、社会保険無しはザラです。
「怪我と弁当は自分持ち」という伝統があって、労災保険もないところもあります。

数トンの石を吊り上げたりするんで、いちおう危険職なんですけどぉ・・・

普通、会社員だと事務用品などの必要物品は会社から支給されると思いますが、職人の道具類や社名入り以外の作業衣服はすべて自分持ち。いろいろな種類が必要だし、結構お金もかかります。
でも「給与」をもらっているので、必要経費として申告することはできません。

私がお世話になったM庭園では、妻子持ち30代から経験25年のオッチャンまで、一律日当6000円でした。
大の男が月25日肉体労働して年収180万円ですよ。

みんな「ローソンでバイトしたほうがええわ~」って泣いてました。

植木職は重機の使えない小さな現場が多いので手掘りの仕事が多く、実は土木より重労働なのです。

しかも昨今の業界事情から遠方の現場へ行くことも多く、建前は「現場実働8時間」でも、
積み込み・荷下ろしや会社から現場への往復の時間もあわせると、平均してサービス残業5~6時間/日というのが実情でした。

これでは家に帰っても寝るだけ。
唯一の休日である日曜日も、家族と過ごすよりは一日中寝て身体を休めているという人が多かったです。

どうして誰も労働監督局なりに訴えないのかというと、それが原因でもし仕事がなくなりでもしたら、
失業保険(月給15万円x70%=月105000円)ではとても暮らせないから。

ここまで耐えているのに、元請のハウスメーカーは「職人の日当下げぇ、安ぅせぇ!」と脅してきます。
街路樹の剪定などの公共工事では、仕事の質は一切問われないので、素人バイト派遣屋さんやシルバー人材さんとの値下げ競争入札です。

プライドの持てる仕事なら待遇は問わないのが職人です。
でも今の造園業界、プライドの持てる仕事なんてほとんど許されないのが現状です。

戦国時代の庭師は、大事な木を枯らしたら切腹したそうですが、
今は「枯れたら取り替えたらええやーん」というスタンスの仕事が求められています。
切腹もイヤだけど・・・)

京都あたりの「名門」植木屋さんでは、中には日当15万という人もいます(←これ、私達の月給)
彼は著名な庭師さんの2代目で、実は現場はあまりできないという内部告発もあります。
もし事実なら、ブランド料ですね。

人気庭師の16代植○さんですら「最近は経営が大変で職人の仕事に専念できひん」とおっしゃいます。
彼はマスコミに登場しすぎと非難する同業者もありますが、会社のために頑張っておられるのです。

京都にはお寺などの上客も多く、修業のために手弁当で働きに来てくれる若者も多いので比較的恵まれているはずなのですが、そんな本場の京都ですら状況は年々厳しくなっています。

タクシードライバー業界の惨状はよく報道されていますが、植木職を辞めてタクシーに行く人もいます。
まだマシ、ってことなんでしょうね。

何年か前のNHKの朝ドラ「わかば」で絶対許せなかった「考証違い」があります。
まず、主人公の女性造園工見習いが毎日のように神戸のお洒落なジャズ・バーに飲みに行っていたこと。

そんな時間もお金もあるわけないの!!!

ついでに怒らせてもらうと、「子供ができたから現場から設計へ」って設定、ふざけるな!
設計だって、そんなラクな仕事じゃありません!