ガーデニングを辞めたワケ

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リクエストにお応えして、造園屋をしていた頃の施工事例をアップしてみました。

ここに並んでいるのはすべて自分の手で施工したもので、個人邸や店舗前といった小さな物件です。

設計図面を描いたものを挙げたらキリがありません。

マンション群の全体外構とか、分譲住宅地まるごと計画、町興しプラン、森の再生・・・みたいな大物件が多くて、ほとんど役所かデベロッパーの仕事。正直言って興味なかったけど(!)「仕事なんだから」と自分に言い聞かせて頑張ってきました。

しかし15年来頭の片隅でくすぶっていた疑問がついに明確になり、昨年「ランドスケープ業界との決別宣言」をいたしました→ http://blog.livedoor.jp/arbinoni/archives/50327212.html

(実はその後ひとつだけ、お世話になっていた建築事務所の尊敬する担当者のお仕事が来たんでつい請けちゃったんですが、今度こそ本当に辞めたぞぉ~!)

「これからはお客様の顔の見える仕事がしたい」と思い、このブログにもときどき登場している小さな造園施工会社に入りました。

そこを辞めて(クビになって?)からは、個人で施工管理請負してました。

でもそこで私が見た「お客様の顔」は、ほとんど会社経営者などのお金持ちのそれでした。
(いまどき、庭の手入れに人を雇おうなんて庶民はいませんよね)。

とても良いお客様ばかりだったので悪く言うつもりは毛頭ないのですが、どうしても、
「なんでも自分の思いのままになる」とお考えになる方が多かったように思います。

庭に関しては、自然の成り行きを受け入れるのが一番いいと私は思っています。

花屋さんで売っている5号以上の鉢植えのお花って、ミョーに綺麗に咲いてますけど、あれは矮化剤という薬をかけて花だけが大きく咲くようにしてあるのだということ、ご存知でしたか?

いわば、成長抑制剤で身体だけ赤ちゃんにして、美しい熟女の顔をつけているようなもの。
鉢から出して地植えにした途端に枝葉が暴走し、いずれにせよ短命です。

だから私は花問屋からはほとんど仕入れず、なるべく農場から小さな若い苗を買っていました。
樹木でも花でも、なるべく若いもの、できれば種から植えるほうがよく育つのです。
もちろんコストも桁違いに安上がりです。

すると「地味すぎるよ~」というご不満が・・・
(日本原産の花は本来地味なんです!)

もうひとつ困ったのが、「イングリッシュ・ガーデン」希望の方が多かったこと。
最初はなるべく希望に沿いたいと頑張ってましたが、そのうちどうしてもイヤになってきました。

日本(特に本州以南)では無理なんですよ、雑誌に出てくるような、所狭しと草花が植わっているような庭は。

もちろん、そういった華麗な庭や花壇を作っているところもありますが、おそらくアホみたいにしょっちゅう植え替えているはずです。つまり、植物の使い捨て。

極論かもしれませんが、歴史的に見ても
「要らなくなったものは捨てる、邪魔な人間は殺す」
がイギリス流。
「和の心」をもつ私には馴染みません。(←ホンマかい?)

日本の高温多湿な気候では、風通しよく、植物の間を離して植えることが何よりも大切です。
しかもこんな狭い庭にあれもこれもとゴチャゴチャ植えたら、
「湿気・日照不足 → 虫や病気が大増殖 → 殺菌殺虫剤まきまくり」がお決まりのパターン。

昔の(和風の)植木屋は、「地面の土が見えるように間をあけて植えろ」と教わったそうです。
日本庭園に樹木が多くて草花が少ないのも、昔の人の知恵だと思います。

また、花物は花後のピンチなどのコマメな手入れが欠かせません。
これは家にいる奥様が、朝晩に様子を見ながらご自分でなさるべきことです。
(英国の庭園でも多分そうしているはずです・・奥様もしくはお抱えのガーデナーが)。

日本の狭い庭ではしかたないかもしれませんが、樹木の下や周りに草花を植えるのも問題です。

草花には水やりが必要ですが、日本の気候では、根の着いた樹木(目安として、植えた後1年以上元気に生きている樹木)には水やりは要りません。
というか、水をやると弱ってしまう木も多いので、本当は同じところに植えないほうが良いのです。

こういった「レクチャー」を繰り返しているうちにだんだんお客様が離れていきました。

ハウスメーカーの営業などでも、施主の土地の地盤の問題点などを口にするのはタブーらしいですね。
耳障りの良い話だけを聞きたいというお客様が多いということなのでしょう。)

緑を見ると心が癒されるといいますが、私は反対にイライラすることが多いです。

仕事の苦労を思い出して腹が立つということもありますが、「こんな風に植えれれては可哀相!」「こんな風に切られてヒドイ!」と思わざるを得ない植栽が街に溢れているからです。

NHK朝の連続ドラマ「純情きらり」でピアニストの西園寺先生が、
「野に咲く花は美しい。花壇の花はちっとも美しくない。あなたの今の演奏は四角四面の花壇のようで面白くもなんともなかった。もっと勉強が必要ですね」と生徒に注意する場面がありました。

千利休の茶事七原則の中にも、「花は野に咲くように」というのがあります。
西園寺教授も良いことを言ったな、と思いました。

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