建売を一皮剥くと・・・

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見えないところまで美しく仕上げる、といったオタク的な大工さんは少ないようです。
もちろん丁寧な仕事をしたいのが本心でしょうが、プロがそんな仕事をしていたらあっという間に倒産です。

特に築20~30年あたりの建売木造住宅(安普請)になりますと、衣装(内装仕上)の下には必ずしも美しいとはいえない肉体(構造)が隠れております。(うっ、耳痛ぇ・・・)

この時期の建売住宅は詳細図や施工図無しで建てられていることが多いので、見えない部分の納まりは大工さんの経験的知恵と現場の判断で作られています。

壁をめくったら何が出てくるかわかりません。(オロナミンCの空瓶や美女の死体に限らず・・・)

これが「リフォーム工事の複雑さ→工事計画の困難さ→見積もりの不正確さ」の大きな原因です。

我が家のリフォームでも、階段から屋上へ出る踊場をスノコ状にして光を入れようと床材をめくってみたところ、根太が平行に付いていないことがわかり、ガックリ。(写真左)。

構造的には全く問題ありませんし、プロの大工さんがネダボンドと太釘で「これでもか」とばかりに頑丈に作ってくれてある根太は、是非そのまま利用したいところです。

でも、もしこの家を売りに出すことになったとき、曲がった根太を見た買主はどういう印象を受けるでしょう?
『手抜き工事の家』と思われるのではないでしょうか・・・

いちいち「根太は平行でなくても大丈夫なのヨ(^^;」と説明するのもメンドーです。

「こういうデザインなんです!」と言い切れるほどには曲がっていないところがビミョーです。

他にも、継ぎ接ぎで梁成を補ったり、端材を組み合わせて寸法を合わせているような部分が多々あります。

材料を無駄なく使った大工さんの心意気には拍手ですが、見た目は著しく悪いので、今風な『構造あらわし仕上げ』などにはとてもできません。

補強金物にしても、外に見せるつもりでつけるのと中に隠すつもりでつけるのでは、商品の選び方もつけ方も全然違ってきます。

床材などは、壁の下に入ってしまって見えなくなるところは実にいい加減に処理してあります。
(機能上はなんら問題ありませんが・・・)。

真ん中の2枚の写真は、階段下に収納を作ろうと思ってあけたところですが、まずはこういった半端に飛び出した部材を全部切り落としてスッキリさせなければ、床も足せなければ箱も入れられません。

プロなら「キワ切り丸鋸」などで一気にギュンッ!とやってしまうのかもしれませんが、こんな狭いところでそんな恐ろしい電動工具を振り回す勇気のないDoodlin'は、手ノコでコツコツはみ出た部分を切り取っていきます。

桂離宮の大修理じゃあるまいし・・・ブツブツ・・・。←プロジェクトX
(川上棟梁、お見かけしましたよ、京都の現場で。感涙!!)

「せぇ~の!」で解体して丸ごと産廃業者に引き取らせ、新品を入れるのが現代のプロのやり方だと思います。
でも我が家では、出来る限り廃材を捨てないようにしています。

だって、我が家の建物は国宝級・・・じゃなくて、産廃の処分料が高いから!
(ワゴン車のトランクルーム一杯の建築廃材で、1万円くらい取られます)。

それでもやはり、一坪の階段室ひとつ壊すとどうしてもこのくらいの廃材が出ます(写真右端)。

一本残らず釘を抜いてもらったら、旦那の日曜日がすっかりつぶれてしまいました。
(ありがとう、パパ!)。こうしておいてもらえばまた木材として使えます。

一見ゴミのようですが、これらは22年かけて完全に乾燥した良質のアカマツ材やスギ材です。
構造部分に使うなら、下手な新品の輸入ホワイトウッドより安定していいかもしれません。
(白蟻や水に強いのはやっぱり国産材でしょう)。

使い物にならない廃材は、昔はカマドや五右衛門風呂にくべて燃料にしていました。

煙が家の中を回れば、あらわしの構造材は燻されて強くなり、防虫防腐剤も要りません。
カマドの灰はアルカリ性なので、天然の和風コンクリート(たたき)も作れるし、庭や畑の土壌改良剤にもなります。

昔の人の知恵には本当に脱帽です。

せめて今流行りの暖炉でもあればちょうど良い燃料になるところですが、そんなもの、築22年の狭小住宅についているわけがありません。

バーベキューの薪にでもできればよいのですが、なにせ置いておく場所がないので、次の『燃える大ゴミ』の日に出される運命のようです。