梅小路・朱雀の庭 (のんべえの庭?)

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京都ガイド最終日のラストは、梅小路「朱雀の庭」を眺めるレストランでのご夕食。建都1200年記念事業で作られた豪華プロジェクトです。以前に私のクラスにいた息子さんの話を聞いて「是非行ってみたい!」とリクエストされた場所。

ここの「朱雀の庭」は私の尊敬する造園家・吉田昌弘氏が計画・設計・総合監督し、井上剛宏氏(植木)と北山安夫氏(石組)が施工した、公共事業とは思えない良質な庭です(1994年開園)。建都1100年事業は平安神宮と植治の神苑でしたが、それに並ぶ大事業でした。ちなみに市民に好評な賀茂川・鴨川沿いの散歩道も、吉田氏が率いるコンサルの設計監理です。

夜だったので庭園散策はできませんでしたが、レストランは全面ガラスで、庭の中にいるような造り。左の写真は「野筋」。日本の原風景のひとつです。この小川の流れは建物の中まで入り込んで来ます。

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これといったこともないメニュー(失礼!)ですが、公園内レストランとしては集客数日本一だそうです。立地も全然良くないし、この庭のおかげではないでしょうか。

数年前までかなり酷い状態になっていましたが、庭園管理の指導がようやく行き届いたのか、ボロクソに剪定されていた可哀相なモミジ達もなんとか立ち直って美しい眺めになっていました。南禅寺近くにある有名な山形有朋の別邸「無隣庵」(正しい漢字が出せません)などもそうですが、公共団体が運営すると入札で毎年管理業者が変わり、庭は悲惨な状態になっていることが多いのです。

朱雀の庭には、井上さんが1年かけて日本中を歩き福島から見つけてきた良質なマツの松林があります。北山さんが昔ながらの手法で組んだ「紅葉谷」など、幽谷の風景の中を歩くこともできます(日中のみ)。京都市緑地管理課の熱心な職員の方々のご尽力で、公園ながら、なんとか庭園らしく保たれています。

イメージ 3松林、紅葉谷、野筋と一周してくると、最後には「水鏡」の大きな池を渡ることができます。池底は吉田さんが苦労して見つけたインド産黒御影。5cm程の薄い水が張ってあり、風景を映し込みます。この庭には花木や花壇まであってカラフル。よく日本庭園らしくないと言われました。しかし「常に新しいことをする」のがバサラ、前衛こそが京都の心意気なのです。(吉田氏・談)

真四角な飛び石は一見コンリクートのようですが、良質な御影石で、きちんと面取りも施してあります。だから今でもどこも角が欠けたりしておりません。「見てくれだけのモダニズム」との大きな違いです。

当初は、レストランから庭へ出られるように計画。暑い夏にはビールを片手に冷たい水に足を浸せる、という予定でした。吉田氏は名高い呑兵衛です^^; 池の中に張り出す花道と屋外舞台で行われる音楽やショーを見ることもできる予定でした。

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しかし安全上(あるいは経営上?)の配慮から、庭に面したドアには「出られません」の貼紙が。屋外ステージが使われたという話も聞きません。(ちょうど計画が終わった頃、バブル崩壊しました)。せっかくなので体験してみようということで、一昨年の夏ですが、靴を脱いで水に入ってみました。「外人」は何でも気軽に試せて便利~♪

気持ちいい~!設計の意図がよく理解できます。少しくらい滑って転んだっていいじゃないですか・・・

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朱雀の庭の奥には「いのちの森」という生態系観察のできる森林が広がっています。学生に説明しながら歩いている白髪の男性が、設計者の吉田さん。この時は呑んでなかったみたいです。空中デッキで樹冠レベルを見て歩けるのも当時は新しいアイデアでしたが、その後大阪万博公園などあちこちで真似されました。この公園(庭園を含む)、入園料200円とお値打ちです。


梅小路(京都駅西側約1km)は操車場後で、他に何も観光資源がない地区です。交通が不便なせいか、イマイチ利用されていないようで、これぞ穴場中の穴場です。(苦笑)(写真は、2001~2004年当時のもので、いずれも夏です)