どぶ (1954年、新東宝)

古い映画の楽しみのひとつは、俳優さんの若い頃の姿が見られることです。

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左から1、2番めは、言わなくても誰だかわかりますね?(あら、昔は若かったのね~!)3番目は娼家のマダム役の三崎千恵子さん。(寅さんのおばちゃん、妖艶!)右端は、精神薄弱のパンパンでルンペン部落の居候という、これ以上は考えられない汚れ役をやっている、乙羽信子先生です。とっても泣かせる役です。(おし~ん!)この他にも、殿山泰司藤原釜足花沢徳衛など、将来「おじいちゃん俳優」として活躍することになる若きスター達が目白押しです。年齢とともに姿が変わっている場合が多いですが、声でわかることもあります。

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何十年遡って探しても「若かったのね~」が出てこないのが、われらが加藤嘉さんです。今回は名前も無く、ただルンペン部落の「博士」として登場します。(「タンポポ」の「センセイ」と同じノリね!)最初は横顔だけで動きもセリフも無かったので「またかよ~」とあせりましたが、そのうち中盤で主人公のツル(乙羽信子)とすれ違うシーンが。でもまだまだセリフは無し・・・しかし終盤でようやく博士は口を開き、ツルが悪い病気を持っているという誰も気づいていなかった事実を、部落の皆に告げたのでした!出番はこれだけですが、顔と動きだけでストーリーの核心を告げる、非常に重要な役回りでした。

嘉さんは、どんなに端役でもワンシーンの出演でも、決して手を抜くことなく役作りをしたそうです。そんな嘉さんにピッタリな、知的で思慮深い役でした。(名前はないけど~)

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ところでこの男の子、「砂の器」で被害者の三木謙一(緒方拳)の遺体を引き取りに来る養子(松山政路)の子役時代じゃないでしょうか。微妙に名前が変わってますけど、絶対そうだと思います。そう、本当に良い俳優さんは、皆さん、息が長いのです。

どぶ、1954年、新藤兼人監督、新東宝映画配給