金環蝕 (日米政界映画比較)

建設談合や汚職関係のニュースが相も変わらず多いですね。

折しも「金環蝕」(きんかんしょく、東宝・1975年)という映画を見たところで、
30年以上経っても何にも変わってないんだな~と変に感心しました。

時代は、「元祖・建設族」の田中角栄元首相が1974年に退陣し1976年に逮捕という渦中にありましたが、
まだダム建設や発電所建設が盛んに行われている頃でした。

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ここに挙げた方々はほんの一例で、当時活躍中の俳優を全員集めたような超豪華キャスト。
器用に立ち回るお育ちの良い官房長官仲代達矢)が、まるで安倍さんのデジャ・ヴのようです。

もちろん我らが加藤嘉さんも「検事総長」として出演しています。(写真右端)

検事総長」と聞いたときには「嘉さんらしい清潔な正義の人ね♪」と活躍を期待したのですが、
なんと法務大臣大滝秀治)に丸め込まれ、あっさり汚職事件の追求を諦めてしまいました。ガーン!

嘉さんの出番を2時間以上待ったあげく、出演はそのワンシーンのみ、2分20秒間(涙)。
嘉さんの端役ぶりは毎度のことですが、物語も、期待を裏切る意外な結末を迎えました。

汚職を暴こうとした関係者達はもう一歩のところで暗殺され、逮捕され、あるいはお金で口を封じられ、
まるで何事もなかったかのように、内閣・国会は静かに続いて行く…

結局、建設談合の結果として無駄に使われた国民の血税5億円(30年前の物価で!)は
裏金として与党政党に流れたまま、闇に葬られることとなったのです。

見終わった途端、いつもは穏やかな主人が「なんて後味の悪いストーリーなんだ!」とキレました。

「勧善懲悪」と「ハッピーエンド」を旨とするハリウッド映画なら、これはありえない結末です。

イメージ 2スッキリしたい方は是非、
「The Distinguished Gentleman」

(邦題:ホワイトハウス狂想曲」)をご覧下さい。

 (注:原題の意味は「下院議員」で、
  ホワイトハウスとは関係ありません)。

エディー・マーフィー主演のコメディですが、
代議制議会民主主義の滑稽さが鋭く描かれています。

 (両方チェックしましたが、吹替版よりも
  英語セリフ+日本語字幕のほうが2倍堪能できます)。

エディー・マーフィー演じるペテン師のグループが
とんでもない手段を使って下院議員に当選します。

(選挙運動が最高なんですが、それは見てのお楽しみに)

当選後も巧妙な手口で次々と政治資金を集めていきます。
お得意の「人種問題おちょくりギャグ」もパワー全開です。

ところが、正義派の美しい女性弁護士と知り合ってから、政界のあり方に疑問を感じ始めてしまいます。
そうして、最後には再び鮮やかな詐欺の手口で大物汚職議員を辞職に追い込む、という痛快ストーリー。

この映画はこんなに面白くてよく出来ているのに、本国アメリカではなぜか酷評を得ました。
米国民のアホさがあまりにリアルに描かれていたので、不快に思う人が多かったのではないでしょうか。

(「華氏911」も、見ずにシカトを決め込む国民が多く、ブッシュは何事もなく再選されました)。

日本でもタレント議員やチルドレン議員が次々と選ばれ、他人事と笑ってはいられない状況ですが、
このペテン師議員は、無所属で、自分の頭を使い、一人で政界をひっくり返しました。

ここでは建設の代わりに、アメリカの90年代らしく、環境問題関係の疑惑が取り上げられていました。
場面転換の間の良さ、セリフの面白さは、エディ・マーフィー(面白かった頃)の真骨頂です。

ホワイトハウス狂想曲」は、笑い転げ、そして考えたい全ての人にお勧めしたい映画です。

しかしまあ、「金環蝕」が1970年代、「ホワイト…」が1990年代にすでに作られていたことを考えると、
進歩してないよな~、この世の中。