ここは私が・・・アメリカ編

友人のジム先生と出かけると、レジや料金所で必ず「ここは私が」「いえ私が」の綱引きになります。
銃の早撃ちならぬ、財布の早出し合戦ですが、たいがいこちらが負けてしまいます。

「僕は教授だ。君たち(同じ大学のポスドクと契約講師の夫婦)の給料は知っているよ。」
と言われると、返す言葉がありません。

昨年の伊勢旅行では、全部こちらで事前に支払いを済ませておくという作戦で勝った(!)のですが、
「このまま黙っては引き下がれんぞ」と強く主張され、今回の天橋立ご招待旅行となったわけです。

でもジム先生はかなり日本の習慣に詳しい方で、アメリカ人が皆そんなに優しいわけではありません。

かつて、自分の勤め先の学科長、学科長夫人、女性教授、それに私(講師)の四人で
出張先のフィラデルフィアのちょっと気取ったレストランに食事に出かけたときには、
キッチリ四等分のワリカンにされ、腰を抜かしました。

学科長(当時)は、真っ白な銀髪に髭をたくわえ、どこから見ても裕福な紳士。
オーソン・ウェルズに似ていて、町を歩くと物乞いが彼のところに集まってくるような方です。

ロングセラーの著作もあり、業界ではちょいと名の知られた学者です。
夫人も某有名大学の教授で、サンフランシスコの自宅から飛行機で通勤されていました。

さらにご夫婦で「現代美術アーティスト」としてメディアにも登場され・・・etc.。
その大先生が、レディ3名を従えて、ワリカン!?

「明日の打ち合わせをしよう」と誘われた食事だったので、公費とばかり思っていたのですが・・・。
アメリカでも、ある程度までの交際費や娯楽費は経費で落とせます。ましてや学科長なら・・・)。

しかも、当地フィラデルフィアでは自分達の人種(スコットランド系)の階級が上で、
グレース・ケリーやJ・F・ケネディアイルランド系)の一族をいかにバカにしていたか、
といった面白話を食事中にさんざん聞かされていた直後だったので、驚きもひとしおでした。

皆から集めたクレジットカードを出し「これとこれに等分して」とウエイターに指示する姿は、
日本人の私の感覚からすれば、あまり見た目の良いものではありませんでした。

(もちろん、私の以外は全部ゴールドカード)。

伝票を切り直す手間をかけられたウエイターさんにも、とんだ迷惑です。
支払い総額が300ドル超でなかったら「ここは私が」と立ち上がりたいくらいでした。(←元江戸っ子)

民間企業では、雇用主が所員を引き連れて外食に出た場合に、ワリカンはありませんでした。
もっとも、貧乏設計事務所が行くのは安い中華ランチとか、ハンバーガーの類でしたけれど。

取引先なら、招待したほうが払う、お願いするほうが払うというのは日本と同じようです。
友達同士なら、デートでない限り、男女でもワリカンが常識です。

私のビール飲み仲間には、州政府の偉いさんから住所不定の日雇い労働者の方までいましたが、
収入差や年齢差に関係なく、飲みに行くときは「今日は私が」と交互に支払いをしていました。

カープール(自動車相乗り)で出かける機会も多いのですが、そんな場合でもやはり公平になるよう、
Aさんが車と運転、Bさんがガソリン代、Cさんが食事代、というように分担していました。

黒人は見栄張りが多く「お嬢様どうぞ」なんて椅子を引いてコーヒーを奢ってくれたりするのですが、
次回にはしっかり私が食事代を支払わされていたり・・・(笑)

日本に帰ってきて一番怖れているのは、年下の人に奢らなければならないという習慣です。
ウチにはとてもそんな余裕はないので、主人にも会社の付き合いはホドホドにとお願いしています。

「先生ビンボーやし~」と宣言していたら学生さんに奢られてしまった私も相当厚かましいですが、

もし韓国人がこのワリカン話を聞いたら、
「礼節を欠く外国人」の姿に、泡を吹いて卒倒するのではないでしょうか。

韓国人のお話はまたこの次に・・・