一級建築士と二級建築士

昨年以来すっかり「有名」になってしまったこの資格。
でも一般にはまだまだ誤解されているようです。

この「ランク付け」みたいな名称、本当、なんとかしてほしいのです。二級は一級の下ではないのですから・・・と思っていたところに、札幌のほうでオバカサンな二級建築士がニュースになったものだから、もうわれら二級建築士は壊滅的ダメージ(?)です。

木造系で定評のある住宅メーカーでバリバリに設計営業をしている同級生が「一級の試験勉強をしている」というので、「なんでぇ~?いらないやん」と尋ねると、「一級建築士の担当者がいい」というお客さんが多いそうなのです。ええーっ!

木造住宅に詳しいのは、二級建築士(二級経由で一級を取った人も含む)なのですよ。

一級の受験資格が与えられる大学の建築学科・建設学科・土木学科といったところでは木造建築に関する授業は皆無と言っていいので、「一級建築士」の中には木造住宅をほとんど知らない人が少なくありません(特に有名大学と言われるところでこの傾向が顕著)。

それを裏付けるかのように、「建築知識」という技術系の業界誌では、3ヶ月に一度くらいの頻繁さで「今さら聞けない、木造住宅の基礎知識」といった特集が組まれています(苦笑)。

ある有名大学工学部建築学科の教授は「日本の住宅ってベイツガで出来てるんでしょう?」とのたまったそうです。大工さんが聞いたら卒倒するでしょうね。(確かに、我が家のような20~30年前の安い安い建売にはベイツガが使われておりますが・・・)

建築士の実技試験も、一級はRC(鉄筋コンクリート)造や鉄骨造の設計課題でプランニング中心です。(今年は例の事件への反省から、もう少し構造重視になると予想されますが)。かたや、二級の試験は木造のごく普通の住宅で、プランニングは難しくない代わり、詳細図(躯体の中身がどのような部材で組み立てられているか)をしっかり描かされます。

筆記試験でも、二級では工事に使う部材の名称などが細かく問われますので、実際住宅建築の現場に出て大工さんと話が通じるのは二級のほうだと思います。そのかわり一級では構造計算問題の難易度が高い・・・はずなのですが、例の事件がねぇ。

件の設計営業の友人は、木材工学系の大学出身、確か「木材研究所」とかナントカ名のつく大学院まで出ていたはず。これ以上頼りになる人はいないはずなのに、どうしてわかってくれないの~!

でも彼のように、「『二級』じゃ看板がサマにならないから」と理由だけで一級建築士を取得せざるをえなくなっている人も多いと思います。確かに、「二級建築士事務所」ってあまり聞いたことないです。そこへ追い討ちをかけるようにテレビの「ビフォー&アフター」などが、「一級建築士」に対する誤解を深めてくれましたね。(「古家具リフォームして!」と頼まれてお困りの一級建築士さんも多いんじゃないでしょうか?)。

確かに二級建築士は、大工さんなど現場の出身者で、大学の建築科を出ていない人が多いも事実なので、「デザイン面で不安」と思う方もあるかもしれません。でも、いくら見た目がお洒落っぽい「デザイナーズハウス」でも、傾いてきたり雨漏りしたりしたら困りませんか?大学出の建築士さんはちゃんと美しい納まり(細部のデザイン)を考えてくれますか?

モダニズム建築で世界を制覇した大スター建築家の「作品」に入居したあるお施主様から、「壁が結露しまくって大変なので、大事な本を置くために別の家を借りましたよ」なんて話を聞いたこともあります。

「作品」を買うのか「住居」を買うのかは個人の選択の自由ですが、現状では、大学での「デザイン教育」と設計や施工の現場とは非常に離れているのだという事実だけは、一般のお客様にも知っておいていただきたいと思います。

(ちなみに筆者は、環境デザイン系大学院卒、大学非常勤講師歴7年ですが、やはり基本は一般の住宅!質の高い施工!と遅ればせながら気づいたのでした・・・)。