トイレ…さぁどっちだ?(スペイン語)

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マドリード1~2日めで、もう街の人々に英語で話しかけるのはやめようと諦めました。「スペインではスペイン語しか通じひんのじゃ!」と腹くくったほうがずっとラクだとわかりました。ここ数年、ヨーロッパ諸国の高等教育業界では英語の普及が目を見張る勢いなのですが、それでも、マドリードの国際会議場のバーのオッチャン達は、英語話者に冷たく対応します。

昨今では、大学業界でも第二外国語不要論の学生や教員が結構増えていて、第二外国語を必修でなくした大学さんも多いと聞いています。英語だけやっときゃいいじゃないか、と…。ヨーロッパ諸国でも、国境を越えて学生を流動させようという政策のための必要性から、どこの国のどこの大学でも、英語で授業をすることに躍起になっています。驚いたことに、日本政府も、それを真似たプロジェクトをゴリゴリ推進しているわけですが、シンガポール等とはそもそもお国事情が違うのですから、絶対に成功しないと私は確信しています。

今回スペインで参加した国際教育関係者の会議でも、「英語をどうするか」はホットな話題で、「英語は高等教育の国際化に必要か?」などという議論があちこちで繰り広げられていました。そのような会議の席上、「ラテンアメリカやアジアではそんな必要はない」と発言した英国人が圧倒的多数でそのディベートに勝利したのを見て、「Yes!(ヨッシャー)」と思いました。国際会議や国際ビジネスの場では、共通語としての英語は確かに必要でしょう。しかし、何も自国内の教育まで無理して英語に変える必要はないじゃないですか。

せっかく日本に来て、日本語を学ばず、英語だけで卒業して帰る「滑稽さ」を冷静に考えてみて下さい。それに、教師も学生も互いに完璧でない英語で、いったい何が学べますか、ちゃんと議論できますか?数学や物理学なら何語で勉強しても同じでしょう、と言う方がありますが、さにあらず。「言語が変わると思考回路が変わってしまう」と、日本語を大切にしている自然科学者は多いです。

最近シカゴ大に転出してしまった私の憧れのK先生も、大学の英語化には猛反対していらっしゃいました。K先生のような世界的な数学者だからこそ、言語が研究や教育に与える影響の深さがわかるのでしょう。

「英語化、国際化」と号令をかけているのは、実は日頃は英語なんか使う用事の無い文部科学省の人とか、「自分は英語ができないのでせめて子供に…」というような教育ママの類だけではないかとすら疑います。「もし音楽留学するならやはりイタリア語で勉強したいよね!」という私の発言に賛同してくださった方、あとで聞いたらその方はドイツ人でした。(失礼しました~ドイツ音楽も偉大です…大汗)

ドイツ語やオランダ語、北欧語を勉強する人が激減したのは、それらの国では英語がよく通じるから地元の言語を学ぶ必要ない、という原因もかなり大きいと思います。つまり、国民が下手に英語の勉強をすると、その国の言語、ひいては文化が滅びる恐れすらあるわけです!その点、自国の言語に頑固なフランス、スペインあたりは文化保持に成功していると言えましょう。

マイナー言語な日本語を学習してくれる人が意外と多いのも、日本で英語が通じないおかげかもしれません。大切な日本文化を守るためにも、皆さん、英語の勉強は即刻やめましょう!(笑)

それに、日本みたいにほぼ全員が日本語を喋っている国で、日本語を喋れない外国人はやはり不幸です。英語圏から来たためにチヤホヤされて、本当の日本を体験しないまま帰る人はさらに不幸です。

また伝統建築・庭園などの分野を学習・理解するのも、日本語がわからなければ無理と断言できます。(そう言いつつ英語で日本建築・庭園の講義をしているのは生活のための方便です…お許しください)

中途半端で表面的な「日本理解」を招く、英語化推進による留学生獲得政策には強く異議を唱えます。(とうとう自分のクビをかけた発言に出た???)

仮にも留学をしようなどという人は、その国の言語くらいは習得する覚悟で行きましょうよ。学生の皆さんも、第二外国語は、食わず嫌いするより楽しんじゃいましょう。だいたい、世界にはいろいろな国があって、異なる文化があるから面白いのです。こんなトイレに出会って、「どっちが男?女?」と迷うスリルも、言語を統一したら無くなってしまいます。(「エイヤッ」とドアを開けてみたら男性用でした…汗)

「H」から冷水が出て「C」から熱湯が出てくる国があるから、映画も面白い。

バベルの塔は、神様の遊び心だと思いませんか?