勉強して出直して。

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NHKの「爆問学問」という番組の収録が勤務先の大学に来たので、見に行ってきました。事務経由で案内がまわって来たし、行ってもよかったんですよね~?

司会者の爆笑問題太田光、以前は「なかなか良いこと言うじゃない」と応援していたのですが、この番組を見始めてから、その自信が鼻につくようになってきていました。この日も、せっかくのゲストの教授陣や会場を埋め尽くした学生達にほとんど喋らせず、場を独占。しかも話は長いし支離滅裂だし、途中、どよ~んと会場の空気が疲労してしまいました。おい、自分のほうがここにいる先生方より面白い話ができるとでも思っているのか?茂木健一郎氏だって、番組の司会をする時はほとんど聞き手に回っていますよ。あの状態をどう編集して面白い番組にするのか、NHKの制作スタッフの力量が問われるところです。放映は3月25日の夜10時だそうです。

確かにこの太田って人、本は沢山読んでいるし知識が豊富なのはわかるし偉いと思うのですけど、学術的な議論とか研究とかいった経験がゼロなのが明らか。大学生は、卒業研究を真面目にやって、論文を出して教授に叩かれて、初めて大人になるんです。3回生以下の人、あるいは中退した人は「俺は一人で学問した」なんて思い上がらないほうが無難。太田氏が教授にふっかける議論は、二次元の世界の人が三次元の世界の人に反論しているようで、全くマトモなお話になっていないのに、本人ひとりが気づいていないという構図でした。

今まで自分より知能程度の低い政治家や芸能人ばかりを相手にしてきて、ちょっと本が売れて勘違いしたのか、自分よりはるかに頭の良い人々の恐ろしさに気づいていないご様子。かくいう私もまさに今その恐ろしさに震えおののいている所なので、太田氏の様子はまるで我が身をうつしているかのようで、危なかしくて見ておれません。京大の教授陣が居並ぶ前で、「西田幾多郎なんて簡単だよ」とすら言い切っていましたし・・・。

何の根拠も示さずに「天動説が正しいかもしれないじゃない」と小山勝二先生(X線物理学の権威)に喰ってかかる場面では、温和でユーモアのわかる尾池総長も「それは1回生の議論だね」とさりげなく注意しておられました。「4年間勉強して学問のボキャブラリーを身に着けて、初めて小山先生と議論できるんだよ」「その通り!」とスカッとしましたので、あの総長発言は是非カットしないで放映していただきたい。

大学の存在意義は、知的レベルの高い人達と出会ってお話をする機会を得ることだと私は思っています。教授を始め、同級生や先輩後輩も含めて、教えてくれるのはやっぱり生身の人間だと思う。一人で本を読んだり、ネットで検索して知識を得たり、自分の独善的な議論に満足していれば済むなら、高い授業料を支払って大学に通う意味ないでしょう?それは文系だって同じだろうと思います。(サークルだけなら学生じゃなくても誰でも入れるよ~)

その意味で「授業なんぞに来なくてよろし、自分で研究せよ」と言われた文学部の先生のご意見は、学問する姿勢や方法論そのものを学ぶ場を放棄せよと言っているようなもので、賛成できませんでした。「過度の自由」「授業軽視」といった一昔前の本学の悪しき慣習を引きずっていてはいけない。新参の若造が生意気言ってご免なさいですけど。

太田氏のさらなる不幸は、大学教員の学問や学生に対する愛情というものが全く理解できていなかったこと。学生に反論されて起源を悪くする教授など、少なくともこの大学には一人もいませんよ。人間関係を信じられないという意味では、今どきのネット社会若者のトップランナーなのかもしれません。でもさ、43歳だよ、あの人・・・私と同い年なんです。彼がもし18歳の青年だったら、もうちょっと楽しんで見ることができたかもしれませんけれど・・・

さて、今回の収録ではこの「太田KY独占」状況の中、なんとか3人の学生が発言の機会を得ました。その中に、まさに「勉強家ゆえの謙虚」とおぼしき吸収力・柔軟性に富んだ学生さんが2名。白服の男子と女子学生マリナちゃんは、20歳前後だろうに、思考レベルは太田氏のそれより数段上とお見受けしました。しかも太田氏の論点のずれた反論やウケ狙いのイジリに対しても、素直に受け止めて大人の対応。

「真剣にモノを考えて、ちゃんと客観的な議論ができる学生さんもいるのだなぁ」と恐れ入りました。本学の醍醐味が堪能できる場面なので、あの2人は是非カットしないで放映していただきたいです。ま、「タレントが来た~!」って写メに走ってる京大生のほうが圧倒的多数でしたけどね・・・^^; 2番目に「どうしたら芸人になれますか?」って質問したアホ学生、カット、カット、カット!

「無知・無学」の恐ろしさ・恥ずかしさを十二分に披露してくれた太田氏に対して、相方の田中裕二氏は、その頭の回転の速さ、空気を読む力、芸人としての技量・経験がいぶし銀のように光っていました。太田氏がどんなにKY暴走しても、田中氏の一言で会場の空気が爆笑に変わる。かつてのタモリを思わせるような絶妙の間合いと言葉の選択・・・サスガはベテランだなぁと思いました。現場ディレクターも、進行の打ち合わせはすべて田中氏一人とだけしていたのが印象的でした。

太田さんがもしこの番組でお笑い芸人としてではなく知識人としての司会の役割を続けたいのであれば、一度大学にでも入り直して勉強してから出直したほうがいいのでないでしょうか。このままだと、真面目な学者は「アホらし」と出演しなくなり、タレント教授や怪しげな学者ばかりが出るようになり、いずれは民放局の企画のような意味不明でやかましいバラエティ番組になってしまうかもしれません。問題や不祥事の多いNHKですが、やっぱり守ってもらいたい牙城があります。

ところで、他人のことより、自分の心配。ゲスト扱いだった「イケメン」先生方のすぐ後ろの席に座らされてしまったため、もしかしたら私のブス顔がチラっとカメラに入ってしまったかも…スッピンだったのに!

化粧してから出直させてくださいぃぃぃ~!!(号泣)