米国大学院入試こぼれ話

イメージ 1

米国の大学入試や院試では、自己PRエッセイが大事だという話は書きました。

基本的には、その学校の教育内容と自分の志がいかに一致するかを述べる、これにつきます。志願先の学校をよく調べ、自分を合格させることによる学校側のメリットにまで言及すべきです。建築学科などでは必ず「私は子供の頃からLEGOで家を作るのが好きで・・・」と書く人がいるようですが、こんなエッセイは毎年何十通も来るそうなので、ダメ。

友人のジ○先生が入試委員をしていた時、非常に目に留まるエッセイが一通届いたそうです。

ジム先生の学校は、全米トップクラスの獣医学大学院で、入学は超難関です。毎年1000通を超える応募があり、書類選考で20名程度まで絞って、面接するそうです。こんな高い競争率を勝ち抜こうと思ったら、そうとう目立てなければなりません。そのエッセイはこう始まっていたそうです。

「人々は私をスーパーウーマンと呼ぶ。どんなことでも美しくやってのけるからである。」

これはかなりキャッチーな書き出しです、ふむふむ。ところで米国の大学院入試では実務経験もかなり重要で、ここでも目立つ必要があります。

「私の現在の職業はEXOTIC DANCER(ヌードダンサー)である。」

ブブーッ、男性教授陣は鼻血を拭きつつ、ついつい続きを読んでしまいました。以下、

「自分の父親はMITを卒業したが、人生の不運から、今はニュージャージーでタクシー運転手をしている。」

・・・などなど、読み物としては最高に面白い話が延々と続いたそうです。知らない方のために注釈すると、MITというのは米国最高ランクの名門大学であり、ニュージャージーのタクシー運転手といえば米国最低ランクの職業です。

その女性は、過去の学業成績もオールAで、一応、出願資格はクリアしています。入試委員会の教授陣は「この女性に一度会ってみたい!」という衝動に駆られたそうです。米国では応募書類や履歴書に写真は貼りませんので、顔を見るには面接するしかないのです。

でもよく調べたらその「オールA」も、田舎の名もない学校で毎学期一科目ずつ履修していたらしく、未来の獣医学生として特に秀でたところは見受けられない・・・激しい葛藤の末、「貴重な面接枠を審査員の興味本位に使うわけにはいかない」と理性を取り戻し、結局その女性は面接に呼ばないことに決定したそうです。ジム先生は、いまだに彼女を面接に呼ばなかったことをちょっと後悔しているような遠い目で、この話を教えてくれました。

エッセイの他にも3通程度の「推薦状」が必要なのですが、これも日本の感覚とはかなり違います。褒めるだけの「仲人口」ではダメ。具体的事例を挙げつつ、客観的な人物評価をしなければなりません。ここでも、推薦者3名が全てノーベル賞受賞科学者!!!という凄い出願書類が届いたそうです。著作権などにルーズな、アジアの某国からの留学志願者でした。怪しいと思って「推薦者」ご本人達に問い合わせたところ、「書いた覚えはない」と・・・米国では偽証や捏造の類は重罪なので、こうなるともう、永久にブラックリスト、出願資格停止です。

日本でもAO入試が増えていますが、大学にとっては普通の入試よりはるかに大変なの、わかりますね。