おばさま

私が「おばさま」と言うときには、血のつながった伯母や叔母ではなく、友人のお母様で、今ではその友人本人よりもずっと親しくさせていただいている、Kさんのことです。学生の頃、家にお邪魔するとよく美味しいご飯をお腹いっぱい食べさせてくださいました。厚かましいことに、三日に一度くらい行ってたような気が・・・

田舎者(?)で何も知らない私に、京都の「文化」を教えてくださったのもおばさまでした。建築が大好きな方だったので、一緒に建築家の講演会に出かけたりお寺を見に行ったりしたものです。先日も、家族連れで近くを通りかかったので、いきなりアポもなしにピンポンしてみたら、とても喜んで迎えて入れてくださり、主人と子供までご飯をご馳走になってしまいました。主人も「また行きたくなる家だね~」などと厚かましいことを言い出すし、娘も「Kさん、Kさん」とすっかり大ファンです。

医師夫人、世間の言うところの「セレブ」のはずなのに、誰もそうとは気づかないほど質素堅実。ご主人の仕事のお手伝いと、主婦業と3人の子育てに専念され、子供達の大学入学後、有名美大卒なのに謙虚すぎるほどに一から勉強し直して、公募展にも入選され、画家として仕事ができるまでになられた方。

「お金を払えば開けるような個展は許さん。それなりの世間の評価を得てからにしなさい。」と厳しくおっしゃったご主人もとても立派な方です。私の人生に大きな影響を及ぼした、心に残る言葉をいろいろとかけてくださった方です。

最近、かの「ベルバラ」で有名な池田理代子さんの「47歳の音大生日記」を読んでいたら、そのおばさまにそっくりな方が「親戚の叔母様」として何度も登場してきました。お寺の跡取りなのに親に内緒で音楽学校に通ったというお父様の話まで出てきます。出身地から生い立ちから、あまりに酷似しています。あまり気になったので電話をして訊ねたところ、やはりご親戚とのことでした。私のような者だけでなく、池田さんのような大物にも影響を与えておられたようです!

「あら、そんな本に私のことが書かれているの?全然知らなかったわ」とおっしゃいながら、「久しぶりに理代子さんに手紙を書くきっかけができて嬉しいわ~♪」と喜んでくださいました。そんなことなら報告して良かったな~と、私も嬉しくなりました。

ご自分の創作活動だけでなく、出身美大の卒業生の支援など、人の世話に本当に親身なおばさま。今も、同窓の仲間が主催するプロジェクトを京都で開くための準備に奔走されているそうです。芸術家でもそんな人もいるんですよ。長年、研究医の妻としての様々なご苦労や、ご自身の病気も乗り越えられ、いまはもうすべてにおいて解脱されているかのように晴れやかなお声でした。

私もそんな熟年になりたいものです。