子供を旅に出す理由

今日は青春18使用開始の日、下関から「船の音で目が覚めたよ」との連絡が入りました。

下関を出て、別府で半日遊び、阿蘇まで250kmを移動する予定でしたが、
先ほど「おりる駅をまちがえたよ」とメールが来ました(苦笑)。

普通列車の本数が少なく接続が悪いため「青春18の鬼門」のひとつに挙げられている日豊本線
一度降りてしまったら、次の電車は2時間半後までありません。
悩んだあげく、1510円払って特急で追いかけることに決めたようです。

格安ローカル旅行にこの臨時出費はバカバカしいですが、レッスン料と思えば安いものです。
(私は寝過ごして数万円の航空券をパーにしたりしてきた人間なので、怒る資格ナシ)。

それに、昨日の「福岡近郊区間大回り(200円で途中下車せず170kmを合法的に乗り回す)」は、
「ちょっとだけ退屈だった」そうです(苦笑)。
今日のようなトラブルは、よい退屈しのぎになったでしょう。

アメリカではサンフランシスコやニューヨークといった大都市を除いて公共の交通機関が非常に少ないので、
どこへ行くにも親が車で送り迎えしなければなりません。
高校生のデートに親が送り迎えなんてカッコ悪い話も結構よくあります。

小学生がひとりで自転車で出かけることすら「危ないから」と禁止しているご家庭が多いです。

小学生以下の子供の一人歩きは、どんな平和な町でもまず見ません。
(大都市に行くと、「道端で暮らしている」階層の子供さん達はいますが)。

それで、日本に帰ってきたとき、すぐに電車やバスの乗り方を教えました。
最初は渋谷(Shibuya)を「シバイヤ」などと読んでいましたが、そのうち漢字が読めるようになると、
乗った電車の路線図をじっと眺め、駅名を片っ端から覚えてくるようになりました。
(早くもオタク遺伝子の芽吹き?)。

子供料金最後(小6)の夏休みには、「半額のラストチャンス!」と近鉄周遊パス(小人1900円で3日間乗り放題)を持たせると、一人で奈良・吉野・伊勢方面まで日帰りで出かけてきました。
(↑近鉄って沿線が広いのです)。

小学生最後の春休みには、近鉄・南海・名鉄フリーパス(小人2500円で3日間全線乗り放題)を与えると、
今度はお泊りで名古屋・岡崎まで行って「城めぐり」をしてきました。(←歴史オタク)
初めて一人で泊まったユースホステルでは、仕事を探しに静岡から来ているおっちゃんや自転車で日本縦断しているお兄さん達と同室になったようです。

中1と中2の夏には、私の夏期講座の通訳ガイド助手として働かせました(向こうのほうが英語が上手)。
2年目には、京都に一人で泊り込み、24時間体制でアメリカ人大学生10数名の世話をしてもらいました。

家でいつもボーっとしている子供の彼からは想像がつかないくらいよく働いてくれていたようで、
「最年少のTA」として頼りにされていました。(注:TA = Teaching Assistant 指導助手)
ウルサ型の大学生や大学院生が14歳の彼をTAと認識しているとはまさか思いませんでした。
バイリンガルの子供は言語を切り替えると同時に性格も別人になるようです。

今年は手伝ってもらう私の仕事もなくなっちゃったし、中3では他所でバイトするわけにもいかないし、
受験もないし、部活動もないし、友達は皆ホームステイやら家族旅行やらで海外に行ってしまったし・・・
で、ほっておいたら長い長い60日間の夏休み、毎日家でゴロゴロされてしまいます。

それで「青春18買ってやるから、旅行しといで」ということになったのです。

本当は1時間に1回連絡してほしいくらい心配なのですが、もう親に何もかも報告する歳ではありません。
じっと我慢して次のメールを待っています。